水戸室内管弦楽団第109回定期演奏会(2022.5.19)
今年初めての水戸芸術館、そして水戸室内管弦楽団の定期演奏会。
メインはアルゲリッチとの共演で、小澤征爾指揮での開催予定がコロナで流れてしまった、シューマンのピアノ協奏曲。
久しぶりの満員のホールで、熱気に包まれたコンサートでした。
【曲目】
ベートーヴェン: 劇音楽〈エグモント〉 序曲
指揮:ラデク・バボラーク
指揮者なし
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
今回のコンサートは、とても水戸らしいもので、久しぶりに興奮しました。
前半はエグモント序曲から。
こちらは、私にとっては、小澤征爾さんとのいろいろな思い出とともに印象深い曲です。バボラークさんの指揮で演奏されましたが、この曲においては、もしかしたら指揮者がいらなかったのではないかと思ったくらい、オーケストラが指揮者を引っ張っていくような快演でした。
そしてブラームスのセレナード。こちらは初めて聞く曲でした。打って変わってバボラークさんの指揮のもと、木管楽器の名手の皆さんたちと、ヴァイオリンのないどっしりとして安定した弦楽器の響きが相まって、いかにも水戸らしい演奏で、かつて定期的に実施されていた、メンバーがソリストとなって指揮者なしで演奏するスタイルを彷彿とさせました。
後半、女王アルゲリッチは、メンバーとともに、というか真っ先に舞台に登場。一気に会場の熱気が高まりました。
一閃というような音で始まるこの曲、指揮者なしでどのようにするのかと思っていましたが、かなりピアノに近い位置に座るコンサートマスターの豊嶋さんとの目くばせで、一気にスタート。
そこから美しい協演が繰り広げられました。フルスコアを見たことはないので全く気づきませんでしたが、時折ピアノのフレーズがオーケストラのどこかのパートと寄り添うところがあり、そこに来るとアルゲリッチさんとメンバーが、鋭い目線を交差させます。
アルゲリッチさんと小澤征爾さんとの共演をこれまでも何度も見ましたが、指揮者がいるときのアルゲリッチさんは、演奏を指揮者に任せて、むしろ「勝手に」と言っていいくらい、突っ走っていくというイメージなのですが、今回は室内楽のように目を合わせ、仲間として演奏している感じがとても印象的でした。
そんなことを楽しんでいるうちにあっという間に終演。満場の拍手の中、何度も呼び戻される楽団のみなさん。今回は独奏者も交えて、みんなで礼をする水戸スタイルでのカーテンコール。残念ながらアンコールはありませんでしたが、会場総立ちを久しぶりに味わって、心地よい終わりでした。
なんといっても水戸の良さは、ホールにあります。響きとかはわかりませんが、あの距離感と一体感です。そこに名手たちと世界的なソリストが集まる。この贅沢さが水戸の最大の魅力だと改めて痛感しました。