アンフォラのつぼ

花鳥風月の写真とクラシック音楽(特に小澤征爾)を追いかけています。

いわきの地表地震断層レポート

このGWにいわきの実家に帰りましたが、地震による地表断層が現れたというレポートを目にしていたので、一応元地質屋として、見ておきたいと思い、山菜採りのついでに見てきました。
 
今回動いた断層は、井戸沢断層と湯ノ岳断層です。
特に、井戸沢断層の西側のものが、大きく動いているようです。
東京大学は、この断層に塩の平断層という名前を提案しています。
どの断層も、4月11日の最大余震として知られる地震で発生したもので、震源断層の延長線上として地表に現れたものだそうです。
 
まずは、田人の中心地、黒田に向かいました。
 
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黒田の中心地に向かう手前で、田んぼに大きな亀裂が見られました。
よく見ると、右側(西側)が30~40cmほどでしょうか、下がっています。
これが井戸沢断層の中で最も西側にある断層です。
土の状況からすると、西側が下がったんだろうと思われますが、よく観察すると、少し横ずれもあるようです。
田んぼをまっすぐに切るように発生しており、あぜ道には応急処置がされていました。
この断層は、まっすぐ田人中学校へと伸びていて、大きな被害を与えています。
 
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井戸沢断層をたどった林道では、このように大きな道路のずれが生じています。応急処置がされていますが、1mほどのずれだと思われます。右手の山側、左手の集落側にもはっきりと伸びています。
 
イメージ 3
さらに林道を進むと、また同じ断層の延長上を横切ります。
応急処置された道路の左右に、1mを超えるずれが見えます。
この場所の右側を見たのが下の写真です。
 
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沢を断層が切っていて、下がった側が城龍だったために、自然のダムができてしまい、淵になっています。その先に直線的に続く断層が見てとれます。
 
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最大の断層が現れた塩の平地区です。
ここは、御斎所神社の入り口にあたる集落で、お参りだけでなく、山野草観察などにも何度も訪れているところです。細長い水田地帯の長辺を断ち切るように、断層が伸びています。
断層の直線状にある家屋は、一部倒壊していました。
写真で見ると、棚田のように見えてしまいますが、
横のあぜ道のラインはもともとは平らだったものです。
 
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塩の平地区の断層を俯瞰したところです。
これも、もともとは水田ですから、水をためるためにも平でなくてはならないところです。
右(西)への80cmほどのずれが生じています。
ここでもやや横ずれもあるように思います。
 
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断層面です。
ここの段差は70cmほどでしょうか。
きれいに断ち切られている様子が分かります。
水がひいてあったのか、すべて下側に流れてしまっています。
右奥に池のように見えるところも、同じ状況で水がたまったところです。
 
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塩の平の林道を断ち切っている断層です。
左の延長上にさきほどの集落があります。
ここは最大180cmほどのずれが生じてしまっています。
右側の山にもはっきりと断層が続いています。
 
塩の平地区は、もともと細長く開けた地域で、そこを田んぼにしているのですが、
今回の断層の現れ方を見ると、元々断層があったところが地質的にも弱くなるために、そこを川が流れ浸食され、それによって生じた山間の平地部分を開拓して水田を作ったところだったと思われます。
今後の水田として回復することも、これだけの段差だとなかなか大変かもしれません。実は近所の方の親戚がこの地域に住んでいるのですが、町へと引っ越すことを考えているとのこと。
地震の時にとても怖い思いをしたということなので、それもやむなしかもしれません。
安直な提案かもしれませんが、今回の東日本大震災関連で現れた地震の痕跡は、今のところいわきだけです。根尾谷断層が特別天然記念物と言うことを考えると、可能であるならば、ますは市の天然記念物として、一部を保存して後世に残すという手もあるかもしれません。
いかんせんずいぶん山の奥なので、なかなか見学するには苦労する場所かもしれませんが。
 
この先、井戸沢断層は、綱木集落にまで続いています。
ここもよく山野草を見に来ていたところです。
 
 
ここから山を下り、我が家の近くの湯ノ岳断層の方へと向かいます。
ハワイアンズを含む藤原地区で、いくつもの地震断層が出現しているようです。
バイパスにも大きな段差ができており、その存在がすぐにわかります。
 
イメージ 9
藤原の田んぼに現れた断層です。
こちらは50cmほどの段差で、南側が下がっています。
奥のトンネルの先にも断層は続いていますが、そちらにいくほど段差は小さくなっているようです。
 
イメージ 10
こちらは上の写真の断層の手前方向に来たところです。
お寺の石段があり、ここはヒガンバナが大変美しく、何度も撮影に来ています。
その石段がまさに断層の直上だったようです。
大きく断面が現れ、石段が崩壊しています。
上に見えるのjはお寺の山門ですが、ひっくり返ってしまっています。
その先の本堂にもかなりの影響があったようです。
ちょうど写真の手前から続く断層は、石段のところの右側を沿うように伸びているのが分かります。
 
湯ノ岳断層は、活断層として認識されていなかった断層で、今回動いたということが大きな話題になっていました。井戸沢断層ほどの段差ではありませんが、広範囲にわたって断層が見られます。
 
 
今回、動いたばかりの断地表断層を目にできるという、めったにない経験をしました。
建物への直接的な被害は、直上のものに限られているようで、それだけは救いですが、これだけt地面が動いたということは、その揺れが相当なものだったということを想像されます。
この断層が、ことごとくこれまで花あるきをしていたところだったことも、不思議な偶然でした。
植物の分布と関係があるとは思えませんが、断層に沿って林道や集落が構成されているということが、あるのかもしれません。
それにしても、直下型地震と言うもののエネルギーのすごさを目にしてしまうと、東京の直下型地震を想像するだけで震えが来てしまいます。
関東平野活断層分布をもう少し詳しく調べてみたい気になりました。
 
ちなみに、山菜も採っていたのですが、こんな原発事故の時期ですし、タケノコが規制されているという話ですから、採り放題かなと思っていたのですが、いわきのみなさん、しっかりと山に入っておられました(笑)。
それはそれでちょっと嬉しかったです。がんばろういわき!
いわきの山菜も安心! ワラビを美味しくいただきました。