アンフォラのつぼ

花鳥風月の写真とクラシック音楽(特に小澤征爾)を追いかけています。

4/8小澤征爾&ベルリン・フィルコンサート鑑賞記

2016年4月8日(金)

1月がたって、ようやく画像処理ソフトの状況が落ち着いたので、まずは大事な記事からアップしたいと思います。
小澤征爾さんのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との共演が発表されたのは昨年の12月でした。
あの大病を患う前は毎年のように登場していたのですが、今回は7年ぶり。
ニュースになったことで、私にもすぐに情報が入りました。
行けるかどうかはわからなかったのですが、取るもののとりあえず、いやとりあえず取るものとの認識で、ベルリン・フィルのホームページからチケットを購入。
もし行けるならと思い、2番目に高い席をゲット。それでも117€は来日公演に比べれば破格でしょう。

そんなわけで、新年度始まったばかりの6日、カタール経由でベルリンにたどり着きました。
(旅行としてjはまた別に書きます)
ポツダムをうろうろした後、ベルリンに戻り、滞在していたアパートから歩いて移動。
途中のソニーセンターで食事をして、万全の体制で念願のフィルハーモニーホールに到着です。

イメージ 1
おお、これがあのフィルハーモニーか!
と感動しきり。
結構古いホールだと思うんですが、斬新な感じが色あせていません。
調べたところ1963年の完成。
ってことは小澤さんがベルリンフィルを初めて振った時もこのホールだったということ。
こりゃすごい。

イメージ 2


人の流れに従って歩いて来たら、どうも裏口についてしまったみたい。
日本人の学生と思しき若者がチケットを求めていました。
今回はあげるわけにはいかない!若者よ!我慢だ!!

イメージ 3
中はこの通り複雑なつくり。
ワインヤード式のそれぞれのブロックにたどり着くのがなかなか至難の業。
それでも慣れた雰囲気で身なりの良い人たちが入っていきます。
各扉の前ではプログラムを販売していました。
たしか3€くらいだったような。

イメージ 4非常に複雑なホール。それにしても映像で見るよりもはるかにでかい。
サントリーホールとは一回りも二回りも大きい。
なんといってもステージが広いのが目につきました。

席につくと、周辺は日本人だらけ。
どうも最前列を含めた良い席には日本人のツアーのお客さんが陣取っているようで、私の周辺には現地在住かわざわざ来たかはわからないけど、日本人が周囲を囲んでいました。
席の位置取りが良かったので、おそらく発表すぐに買った人たちかと思われました。
ちなみに水戸室内での活躍しているチェリストの原田さんや、ヴァイオリニストの堀伝さん、指揮者の山田和樹さんの姿も見えました。
全体としては2割くらいが日本人だったような気がします。


<プログラム>
モーツァルト:セレナード第10番 変ロ長調『グラン・パルティータ』 (指揮者なし)

ベートーヴェン:劇音楽『エグモント』序曲
ベートーヴェン:ピアノ、合唱と管弦楽のための合唱幻想曲 ハ短調
 指揮  小澤征爾
 ピアノ ピーター・ゼルキン
 合唱  ベルリン放送合唱団


前半の演奏が始まる前に、関係者と思しきスーツ姿の人が壇上に現れ、ドイツ語で何かを話しました。
「セイジオザワ」と2回言った以外は全く意味が分かりませんでしたが、
拍手も起きていたので久々の登場への賛辞でも述べているのかと勝手に理解。
翌日のネットニュースで、前日のリハーサル時にベルリン・フィルの名誉団員の称号が与えられていたことが判明。さすがにドイツ語はわかりませんわ。
しかし、初演から50年とか。もちろん初演時には私よりずっと若いわけで・・・すごい。

さて、前半は何といってもベルリン・フィルの珠玉の管楽プレイヤー13人によるグラン・パルティータ。
これが良くないはずがない。
50分という結構長めの曲でも変化があって心地よく時間が過ぎる。

イメージ 5
休憩中にちょっとだけ劇場の中を探検。後ろからみるのもなかなか良い感じ。
ステージ目の前のブロックが日本人の多いエリアで、その一つ後ろが私がいたブロックです。

そして後半。
団員がチューニングを終えても、なかなか指揮者が入ってこないので、観客が少しざわざわした頃、満を持して小澤征爾さんの登場です。
出てきただけで地元の観客から「ブラボー!」がかかります。しかも結構な量。暖かい客席にもグッときました。
この頃サイトウ・キネン、水戸室内ばかりだったので、団員と別に出てくるのも久しぶりです。
少しだけ腰が伸びきっていない近頃の歩き方で、花道を歩きます。
このホールの花道は楽団員の中ではなく別の通路になっているので、少し一生懸命に歩いているのがちょっと気になってしまいました。
コンサートマスターの樫本さんが少し支えるように手を出しながら、階段を駆け上がります。
元気にここに立てて本当に良かった。

そしてエグモント序曲。
これは大変な名演でした!!
数年前の音楽塾でも聞きましたが、なんだろう。濃密度が違う。
少し遅めのテンポで、1つの音をしっかり聞かせる感じ。
重々しい音から輝かしい音への展開も、実に劇的。
8分ほどの曲が終わるのが惜しくてたまらない。この音楽に浸っていたい。そんな気がする快演でした。

続いてピーター・ゼルキンとの合唱幻想曲。
ゼルキンのこの曲はサイトウキネンフェスティバル松本の20周年記念コンサートで、小澤さんが病気のためモルローの指揮で聞いたことがありました。
ピアノのソロからこの曲がスタートしました。どうも様子がおかしいのです。
しっかりとした音には何ら問題がないのに、高音のところでの細かい音がスムーズに聞こえません。正直言って、「あ、止まるか!」と思うところもありました。
どうもみぎての小指あたりに早い音型が来ると、それ以上に手が震えてしまっているようです。
きっとなにかのご病気や症状なのでしょう。
ちょっとひやひやしながら曲が進んでいきます。
(もしかしたらそういう解釈での演奏なのかもしれませんが、明らかに手が震えていたのは確かです)
このような状況なので、合わせるオーケストラも少しテンポが遅くなります。
こういったあたりの合わせ方は小澤さんの得意分野のはずです。
ゼルキンの状況を見守りながら、着実にピアノ、オケが対話を繰り返していきます。
昨年夏のオザワ80歳バースデーのアルゲリッチとの「競演」とは比べるべくもありませんが、古くからの友人との「協演」としてはこれもありかという気がします。
そして合唱が加わりややスローテンポではありながら、壮大なフィナーレを迎えました。

イメージ 6
曲の良さもあって、観衆は大いに沸き立ちました。
演奏もさることながら、小澤征爾80歳の復活、50年のベルリン・フィルとの歴史、そういったもの全体に拍手が送られていたような気がしました。

イメージ 7
そして、オーケストラが2回のカーテンコールの後に部隊を去ると、スタンディングオベーションが起き、小澤&ゼルキンが呼び戻されました。
こういう場面よくテレビで見ましたが、実際目にすると非常に感動するものですね。

興奮冷めやらぬ中、30分強のオザワステージが終わりました。
満足げな顔の人々、音楽関係者と思われる日本人一団も笑顔をはじけさせていました。
「世界最高峰」とタイトルをつけられるこの楽団を率いて、これだけのコンサートをし、欧州の観客を惹きつけるのを目の当たりにして、やはりすごい人だとの思いを新たにしました。

イメージ 8
去りがたいフィルハーモニーホールで、グッズショップやらをウロウロし、外へ出てくると、ホールがライトアップされていました。
1kmほどのアパートまでの道のりは、満足感と喪失感がいっぱい。
それも含めて、ここまで来て本当に良かった。そう思える演奏会でした。