アンフォラのつぼ

花鳥風月の写真とクラシック音楽(特に小澤征爾)を追いかけています。

水戸室内管弦楽団第100回定期演奏会

久しぶりの投稿が、興奮冷めやらぬコンサートレポートとするには、ちょっと空いてしまった・・・

先日、来年1月のベルリン・フィルに登場予定だった小澤征爾さんが、キャンセルとなったことが発表された。
ラヴェルの歌劇「子供と魔法」、グラミー賞受賞のこの作品を、ベルリン・フィルでの再演ということで、
ベルリンまで追いかけていく予定にしていたが、残念。
でも、前回の2015年ベルリンとパリでの演奏会の際には、確か少し体調を崩されたはず。
ご本人も無念とは思うが、先日の第九の演奏の際もかなりの疲労がたまられたと思うので、
ぜひゆっくりと静養して、日本でのさらなる活躍を期待したい。
ファンとしては痛切に思う。


2017年10月13日(金)

水戸室内管弦楽団第100回定期演奏会
水戸芸術館 コンサートホールATM)


指揮:ラデク・バボラーク(第1、2楽章)、小澤征爾(第3,4楽章)
独唱:三宅理恵(ソプラノ)、藤村実穂子(メゾ・ソプラノ)、福井 敬(テノール)、マルクス・アイヒェ(バリトン
合唱:東京オペラシンガーズ
管弦楽:水戸室内管弦楽団


多分初めてこの楽団を聞き始めたのは1997年だったと思う。
ロビーで開催されていた水戸室内管弦楽団のポスター展で記憶があるのはそのあたり。
20年前のその演奏会は第30回だった。
それからだけでも70回の演奏会がひらかれていたということか。
メンバーも見慣れた観客もみんな年を取ったわけだ・・・

さて、記念すべき100回は第九が選ばれた。
ベートーヴェンシリーズの途中なので、予想通りといったところ。
志賀高原の森の音楽堂での第九の経験がある小澤さんだけに、小編成dでも自信はあったはず。
体力の面で、前半楽章はバボラークに指揮を譲ったが、
おそらく音楽は全曲小澤さんのもののような気がした。

バボラークもMCOメンバーなので、小澤さんと同じようにメンバーと一緒に登場。
第1楽章から、いつもとちょっと違うMCOの音が鳴りだした。
いつもに比べてコントラバスが3名もいるので、重厚感がすばらしい。
切れもよく勢いも良い第1楽章、そしてテンポが遅めの第2楽章は、
ティンパニの活躍がつぶさに感じられて、好演。

第2楽章が終わると、バボラークを讃える拍手が大きくではないが湧いたが、
曲の途中ということもあってか、振り返ることなく袖へ。
変わって合唱、独唱、ピッコロ、打楽器などの後半部隊が席に着く。
そして小澤征爾さんも登場。
拍手には応えず、式台の椅子に座ってスタンバイ。

第3楽章が始まると、やはり何かが違う。
音ということではない・・・
おそらく操縦されている感じが違うのではないか。
これまでよりもまたさらに小さくなった腕の所作に、演奏が食いついていくといった趣。
あまりにも美しい音楽に、小澤さんからずっと笑顔が漏れ続ける。
珍しくスコアをめくりながら指揮をしているのが、印象的。
3楽章ではほとんど立つことはなく、流れるような音楽を奏でた。

楽章の合間は、休憩用の椅子には座らず、水分を少しだけ取ってそれほど長く休まなかった。
そしてクライマックス第4楽章。
小編成とは思えない響きが醸し出される。
音の粒や楽譜の細かい音型まで聞こえてくるのは、とても新鮮で楽しい。
大きなホールではないからこその醍醐味と言える。
歓喜の歌のメロディーが静かに始まり、独唱の素晴らしいリードで、合唱が加わり、
ホールいっぱいに音が盛り上がっていくのが、体全体でわかる。
最後のところでは小澤さんも立ち上がり、大団円を迎えた。

背筋が震えるような感動を覚えるクライマックスだった。
なによりも演奏がすごかった。
曲がすごいのはわかっているものの、圧倒的な合唱とオーケストラの響きに
持っていかれました。
特にこの前に聞いた第九は二条城での屋外ライブだっただけに、
ホール全体からj響く音の塊に、ああ、この曲はこういう音を聞くべき曲なのかと再認識。

やっぱり水戸芸術館はいいし、水戸室内管弦楽団はすごい。
そして、ここにいられたことは本当にうれしい。
前回のアルゲリッチとの協演、そして今回。
水戸芸術館で「奇跡」が連発です。

次の予定が書かれていなかったのがとても残念ですが、
残りのベートーヴェンは田園か英雄。
小澤さんの体力が快復されることを期待してます!!!